登録制のアルバイトの一つに工場での書籍の仕分けがある。
 
ベルトコンベアーに乗って流れてくる雑誌や漫画本をひたすら仕分けていくのである。
 
立ち仕事で、いったん流れ出したら、休む間もない。
 
そんな単純作業を繰り返している内に、体は動かしながら、頭はふと考える。
 
実働約8時間で約7000円のアルバイト、流れてくる雑誌の中の原稿料は1ページでその数倍の値になる。どちらも経験していることから得る奇妙な感覚は消えない。
 
写真を撮る者にとって、写真を撮ることの時間や労力や金銭の苦悩と大切さを知っているから、その値に否定はしないし、疑問もない。自分もそれらの恩恵を受けたことのある身。
アルバイトが良くて、写真家が悪くて、と言うことでもないし、もちろんその逆でもない。
 
ただ流通の過程で、一つの大きな流れの中で、幾つもの小さな流れがあるのだなあと思う。例えば、一つの雑誌を制作して、世の中に出るには、文字通りの汗を流す仕事をしている人がいる。
 
フリーになって、どんな世界も厳しいとますます実感する。その厳しさを実感した上でもっと頑張らなきゃと思ってしまう。
 
写真家にとって、何でも表と裏の社会を知ることは、大切だと思う。
 
アルバイトをしながらでも、もし写真を続けていたら、もし生きていたら、将来の写真に深みや説得力が出ると信じたい。
 
もしもの話しはないが、もし売れっ子の作家になっても、悩んだり、苦労している下積みの記憶は忘れたくない。
 
もう10年は、この世界の厳しさに身を委ねる覚語だ。自分の為だけでなく、写真で恩返しもしたいから。
 
今までの出会った人達はどこにいますか?
頑張っていますか?